7月10日(木)「日本残侠伝」

「日本残侠伝」('68・日活)監督・原案・脚本:マキノ雅弘 脚本:永田俊夫 撮影:横山実 音楽:小杉太一郎 美術:中村公彦 出演:高橋英樹/南田洋子/長門裕之/梶芽衣子/川地民夫/郷硏冶/津川雅彦/水島道太郎
東映任侠映画の名匠・マキノ雅弘が、日活に招かれ高橋英樹主演で監督した任侠映画。大正半ばの浅草。長屋をつぶしてデパ−トを建てようとたくらむ悪玉やくざの不埒なふるまいに、木場江戸常組の小頭・中山秀次郎の怒りの刃がうなりをあげる。マキノ雅弘は日活でも東映調のパタ−ンを崩さず正統的な任侠映画の佳作に仕上げた。日活任侠映画をひとりで背負っていた感のある高橋英樹が、マキノ雅弘監督一流の演技指導をうけ、堂々たる任侠スタ−ぶりを披露。また、マキノ雅弘が名づけ親となり、太田雅子がこの作品から梶芽衣子と芸名を変えた。彼女もこの作品以降見違えるほどの生長を見せる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

高橋英樹という高倉健のそれとは違ったいかにも日活スタ−らしい何処かとっぽい個性を、マキノ雅弘は縦横に駆使して輝かせて見せてくれる。中央に高橋を配したことで脇役たちも伸び伸びと働くことが出来たようだ。そのためか、マキノは秀次郎のラストの殴り込みを東映調にはせず、祭の喧噪を借りて敵方に神輿を担ぎ込むという、何処か'41年の傑作「阿波の踊子」を思わせるようなシュチュエ−ションで処理して、血生臭さを回避して華やかなモノにしている。高橋英樹の立ち回りもヤクザのものではない木場の者の、これまた高倉健のそれとは違った光り物への恐怖に満ちた迫真性があった。呑気呆亭